富士フイルム選手権2010年11月4日(木)5日(金)6日(土)開催コース:平川カントリークラブ 〒266-0004千葉県千葉市緑区平川町405番地
ベストスコアの67。今年初めて大会初日に好スタート切った飯合肇にとって、最も驚異に感じていた存在が盟友のジェット尾崎だった。尾崎は「シニア賞金王奪取」を宣言しており、その言葉どおりシニアツアー開幕戦で優勝を遂げ、日本プロシニアでは2位の活躍で賞金ランキング1位の座に就いている。ジェットには勢いもある。
一方の飯合は、昨年のシニア賞金王タイトルを手にし、「今年も」の思いが空回りをもたらした。シニアツアー3試合を終えて、ベスト10フィニッシュがわずかに一度だけと不振が続いていた。ジャンボ軍団でともに鎬を削って来た仲だけに、その実力もモチベーションの高さも誰よりも良く知っている。それだけに飯合の今季初優勝の前に立ちふさがるのは、ジェットであることを予想していた。
昨日の第3ラウンドでは飯合と尾崎が最終組で一緒にプレー。飯合は4、5番ホールでバーディーを奪い、尾崎が5番ホールでボギーを叩いて、その差は4打に広がった。このまま好調なプレーを続けて行けば、確実に逃げ切れる。そう感じたところで、降り出していた雨が強まって競技はサスペンデットとなり、翌朝6時51分、8番グリーンのパットからプレー再開となった。
サスペンデットによって気持ちの切り替えが出来たのは、尾崎の方だった。
「寝て起きたら1打差になって(プレーの流れが変わって)いるだろう。これ以上は離されない」。そう口にしていた尾崎は、競技再開後の12番ホールでボギーを叩き、飯合とは5打差に広がったものの、13番ホールでバーディーを奪って「ジェット」エンジン全開!
15番ホール(519ヤード・パー5)では、フォローの風を味方につけてティーショットを豪快に飛ばし、370ヤード近くまでボールを運んだのだった。ピンまでは残り170ヤード。8番アイアンでデットに攻め、ピン手前1.5メートル。このイーグルパットを楽々決め、ギャラリーの歓声に右手を挙げて応えるジェット。その差は1打に縮まった。
「前半で失速したように思えたけれど、やっぱりジェットはスコアを戻して来た。5打差はあってないようなもの。バーディーとボギー、イーグル一つで簡単に差は縮まる。それでも、まだ1打差がある。1打差は大きい」(飯合)。
尾崎のイーグル奪取で順位が変わったわけではない。しかし、肉迫されたプレッシャーからか、飯合は16番ホールのティーショットを右の林に打ち込んでしまった。ピンまで残り200ヤード。大ピンチ。
「70ヤード先の5ヤードほどの隙間を狙い、4番アイアンでフックボールを打った。あと1ラウンド、18ホールは残っていると思ったから。一歩間違えればOB。昔から、前しか見ないからね。この歳になると失敗したことばかりを思い出すけど、石川(遼)君のように成功したことをイメージして打った」と飯合は振り返った。
ボールはイメージどおりに前方の隙間を通り抜け、グリーン手前30ヤードに止まった。そして寄せワンに成功し、見事パーセーブ。尾崎に並ばれることなく、1打差をキープしたまま18番ホールを迎えた。オナーの尾崎がフェアウエイ左のバンカーに打ち込み、ボールが砂に沈んでいたことでピンを狙えず、レイアップ。飯合は、そのプレーを見て、パーセーブが難しいと判断した。ピンを狙わず、手堅くグリーン中央にパーオンさせるのがセオリー。しかし、飯合は果敢にグリーン右サイドのピンを狙い、右バンカーに打ち込んでしまった。結局、二人ともにボギーでホールアウト。1位と2位の1打差は縮まることはなかった。
試合は第3ラウンドが悪天候によるコースコンディション不良によって中止となり、飯合の今季初優勝が決まった。
「勝とうと思う選手を下して優勝できたのが何よりも嬉しい。(優勝という)冠を一つ手に入れられたことで、残りの試合ではガチンコで戦える」と飯合。この優勝で賞金ランキングも2位に浮上。
1打差の大きさを知り、その1打差の恩恵に授かり、それによる1勝の自信で逆転でのシニア賞金王奪取も視界に入って来た。役者が揃い、シニアツアーがますます面白くなった。